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高橋源一郎さん、DV国家についての考察

高橋源一郎が、愛を強いる支配、国家のDVについて
「愛という名の支配」はどこにでも存在する。
男と女・母と子・父と子・教師と生徒・上司と部下・
そして国家と国民・反権力グループのなかにさえ、それは存在する。
是非およみください。
高橋源一郎さん、DV国家についての考察_a0292602_18173021.jpg

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論壇時評)愛を強いる支配 ここは、DV国家なのか 作家・高橋源一郎 http://www.asahi.com/articles/DA2S10887407.html
ある若者が、デモに行くという友人と、その後で映画を見ようと約束した。
その若者が、友人が交じったデモ隊の列と並んで歩道を歩いていた時、
突然、私服警官に逮捕された。
理由は公務執行妨害だったが、若者にはまったく覚えがなかった。
後に若者は検察官から「きみが威圧的態度をとり、警官は恐怖を感じたからだ」といわれた。
そういえば、私服警官らしい人間と目があったことは思い出したが、
それが公務執行妨害にあたるとは夢にも思わなかった。
留置場に入った若者は、
そこで、1年近く裁判も始まらずただ留め置かれているという窃盗犯に出会った。
貧困から何度も窃盗を繰り返した男は、1件ずつゆっくり起訴されていた。
警察・検察の裁量によって、裁判が始まる前に、実質的には刑罰の執行が行われていたのだ。
「それって、人権侵害じゃないの」と若者がいうと
「わからない。法律なんか読んだことがない」と男はいった。
若者と男の話を聞きとがめた看守が、房の外から、バケツで2人に水をかけた。  
「うるさい黙れ、犯罪者には人権なんかないんだ」 極寒の房内は室温が氷点下にまで下がっていた。 濡(ぬ)れた体を震わせながら、若者は、犯罪者の人権が軽んじられる国では、
人権そのものが軽んじられるだろうと考えていた。
それは、本や理論で学んだ考えではなく、経験が彼に教えたものだった。
その若者が半世紀近くたって、いまこの論壇時評を書いている。    
 * 秘密の内容や罰則適用について拡大解釈が危惧されている「特定秘密保護法」が、
強い反対の下、可決・成立した。
この法律の問題点については、多くのメディアが詳細に
特定秘密に該当する情報は国民のものではなく官僚のものになる、と警告し、
外岡秀俊〈2〉は秘密保全に関する法の歴史をたどり直す。
この法案に反対する約2千人の学者たちの代表が記者会見を行った、
その映像をユーチューブで見ることができる。
中でも、わたしは、平田オリザのこんなことばに強い印象を受けた〈3〉。
「最近、わたしは大阪のある行政職員から封書をいただきました。
なぜ封書かというと、大阪の職員は、メールは検閲される可能性があると、
萎縮してしまっているのです。
……このいやな感じは、東京にいるとわからないと思います。
(特定秘密法の成立とは)それが国政で当たり前になるということです」 維新の会の政治家がトップを務める大阪の状況は、この法案とは、厳密にいうなら関係がない。
けれども、平田は関係がある、と示唆するのである。  
今年になって目立ったのは、様々な社会的「弱者」がバッシングを受けたこと、
「従軍慰安婦は戦争につきもの」という政治家や、
「子どもが生まれたら会社を辞めろ」という女性評論家が現れたこと、
そして、新しい政権が、強硬な政策を次々と打ち出し、
対話ではなく力でその政策の実現を図ろうとしていることだった。
さらに不思議なのは、力を誇示する政治家たちが、
同時に力とはおよそ正反対な「愛(国心)」ということばを叫ぶことだった。
誤解を恐れずにいうなら、わたしには、この国の政治が、
パートナーに暴力をふるう、いわゆるDV(ドメスティック・バイオレンス)の加害者に酷似しつつあるように思える。
彼らは、パートナーを「力」で支配し、経済的な自立を邪魔し、
それにもかかわらず自らを「愛する」よう命令するのである。 平田が紹介した大阪職員は、
「外部への発信」が「パートナー」に知られることを極度に恐れている。
それは、DVでもっとも典型的な症候に他ならない。    
* わたしは、いま毎日、「特定秘密法」全文〈4〉と、
「国家安全保障と情報への権利に関する国際原則」(通称「ツワネ原則」)の
(膨大な)英和対訳全文〈5〉を持ち歩き、しょっちゅう読んでいる。
妙な言い方だが、とても面白い。
前者で特徴的なのは、そこで使われている日本語が奇妙であることだ。
いわゆる法律用語で書かれた文章のいくつかはまったく意味がわからない。
詳しい人たちの話を聞くと、通常の日本語では考えられないような意味になったりするらしい〈6〉。
日本語でないとしたら、それは何語なのだろう。
ほとんどの日本人に意味がとれないことばで書かれた「重要」法案とは何なのだろう。
一方、国家の安全保障と情報の権利に関して、長い討議の果てにできた「ツワネ原則」は、
全ての人間に「公権力が保有する情報」にアクセスする権利があることを、
民主主義社会の根幹であるとしていて、
知る権利の価値を軽んじる「特定秘密法」の考え方と鋭く対立する。
だが、「原則」で、わたしがもっとも感銘を受けたのは、
「わかる」ことだ。およそ、
ことばを理解することができる者なら誰でもわかるように「原則」は書かれている。
「ツワネ原則」(の文章)は読むものすべての心を明るく、励ます。

DV被害者へのアドバイスの多くは、こんな一文で終わっている。
わたしがいま書くべきことは、実はそれと同じなのかもしれない。
……自分を責めてはならない。
明るく、前向きな気持ちでいることだけが、この状況から抜け出す力を与えてくれるのである。   

〈1〉佐藤優「特定秘密保護法と統帥権」(創1月号)
〈2〉外岡秀俊「秘密保全の法律がいかに濫用(らんよう)されたか 現実を直視しよう」(Journalism12月号)
〈3〉平田オリザの発言が含まれた動画「特定秘密保護法案・2千人超の学者が廃案を要求」 http://www.youtube.com/watch?v=yBOBvrytChM
〈4〉特定秘密法・全文(本紙12月8日付、ネット記事は http://www.asahi.com/articles/TKY201312070353.html
〈5〉日弁連による「ツワネ原則」の全文日本語訳 掲載ページは http://www.nichibenren.or.jp/library/ja/opinion/statement/data/2013/tshwane.pdf http://www.nichibenren.or.jp/activity/document/statement/year/2013/131115.html) 〈6〉たとえば、おがた林太郎「テロリズムの定義」 http://blogos.com/article/75130/ (http://rinta.jp/blog/entry-11717401429.html)     ◇  たかはし・げんいちろう 1951年生まれ。明治学院大学教授。初のノンフィクション作品『101年目の孤独』(岩波書店)がまもなく刊行予定。     *朝日新聞デジタルより
by oomawotomeru | 2013-12-19 18:17 | 社会


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2012年4月「原発に反対しながら研究をつづける小出裕章さんのおはなし」をクレヨンハウスから出版しました。2011年3月変わってしまった世界を生きる子どもたちへ、この本を読んでよりよい未来を生きて欲しいとの願いをこめて書きました。
「原発に反対しながら研究をつづける小出裕章さんのおはなし」著者:野村保子 監修:小出裕章

http://www.amazon.co.jp/%E5%8E%9F%E7%99%BA%E3%81%AB%E5%8F%8D%E5%AF%BE%E3%81%97%E3%81%AA%E3%81%8C%E3%82%89%E7%A0%94%E7%A9%B6%E3%82%92%E3%81%A4%E3%81%A5%E3%81%91%E3%82%8B%E5%B0%8F%E5%87%BA%E8%A3%95%E7%AB%A0%E3%81%95%E3%82%93%E3%81%AE%E3%81%8A%E3%81%AF%E3%81%AA%E3%81%97-%E9%87%8E%E6%9D%91%E4%BF%9D%E5%AD%90/dp/486101218X

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