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原発を止めた巻町に学ぶ④

原発を住民投票で中止に追い込んだ巻町で、住民たちの意識形成にマスコミが多くの影響を受けていることを軸に、マスコミ報道を読み比べています。今回は大手日刊紙が中心です。
市民運動は知ることから始ります。正しく知ったことを武器に原発を、日本の原発を止めたいです。
是非お読みください。

郡山市の池田雅之です
原発建設を止めた巻町に学ぶ
「自分たちのことは、自分たちで決める為に」の④回目を送らせていただきます

住民投票で原発建設を止めるという、
日本の市民運動史上、画期的な出来事を起こした
新潟県巻町の事例をみると、
マスメディアが、「民意の形成」にとって、重要ポイントになることが浮かび上がってきます。


では全国紙(読売・朝日・毎日・産経・赤旗)が、

福島で甲状腺がんが新たに2人見つかったニュースを、
どう伝えたか?読み比べてみたいと思います。

読売新聞(発行部数1000万部)は、

33面の地域版に

「甲状腺検査がん疑い10人
医大「原発と関係、考えにくい」」

との見出しで、400字程度の小さな記事を紹介していました(2月14日付)

地域版なので、読売新聞の県外の読者は、
甲状腺がんが増えている事を知ることができません。

また、「原発事故の影響を否定する」、
医大の見解だけが紹介される記事になっていました。



朝日新聞(発行部数779万部)は、

「福島の子3人甲状腺がん 4万人調査
「被ばく影響考えにくい」」

との見出しで、36面の社会面に450字程度の小さな記事を紹介していました(2月14日付)

こちらは全国版の社会面にのったので、
福島県外の人も甲状腺がんが増えていることを知ることができます。

また記事の中で、福島医大の見解と共に

「子どもの甲状腺がんの発生頻度は100万人に1~2人程度で、
今回それより高い頻度で見つかった」

と反対意見も紹介されていました。

しかし、この記事の裏のページには(29面・科学面)、

「甲状腺の被曝、解明の途上 福島県民は30ミリシーベルト以下か」

という、住民が甲状腺にどれくらい被ばくしたかを調べる
国のプロジェクトを紹介する記事がのっていました。

記事には、

「甲状腺被曝が最高とされた
飯館村の1歳児でも9割は30ミリシーベルト以下、
それ以外の地域では27~2以下との推計だった。

甲状腺被曝の防護剤を飲む
国際基準の50ミリシーベルトを下回っていた」

と書かれ、

2つの記事を合わせて読むと、

「原発事故の影響は否定される」

内容が強調される、
紙面づくりになっていました。



毎日新聞(発行部数779万部)は、

「甲状腺がん新たに2人 福島子ども調査 他7人に疑い」

との見出しで、25面(社会面)で記事を紹介していました。

毎日は一面のNWES見出しで

「福島甲状腺がん新たに子ども2人」

と大きく報じるなど、
(3大新聞の中で)一番しっかりと記事を書いていたと感じたので、
記事全文を紹介してみます。

「甲状腺がん新たに2人 福島子ども調査 他7人に疑い」 

(毎日新聞2月14日25面社会面 上段 文字数約850字)

福島県が行っている子ども(震災時18歳以下)の甲状腺検査で、
新たに2人が甲状腺がんと診断された事が、
13日の県民健康管理調査の検討委員会(座長・山下俊一福島県立医大副学長)で報告された。

昨年9月に判明した1人と合わせ計3人になった。

他に7人に甲状腺がんの疑いがあり、追加検査を行う。

同検討委は原発事故の影響について否定的見解を示したが、

「断定も否定もできない」
と話す専門家もいる。

疑いのある人を含めた10人の内訳は
男性3人、女性7人で平均年齢15歳。

11年度に受診した
原発周辺13市町村の3万8114人の中から見つかり、
地域的な偏りはないという。

甲状腺がんと判明した3人は手術を終え、
7人は細胞検査により
約8割の疑いで甲状腺がんの可能性があるという。

7人の確定診断は今後の手術後などになるため、
最大10人に増える可能性がある。

記者会見した鈴木真一・県立医大教授によると、
子供の甲状腺がんの発生率は「100万人に1人」が通説。

今回の検査は大きく上回るが、
甲状腺がんは自覚症状が出てから診察する場合がほとんどで、
今回のような精度での疫学調査は前例がなく
比較できないという。

さらに、チェルノブイリ原発事故では
最短で4年後に発症が増加しているとして、
鈴木教授は
「元々あったものを発見した可能性が高い
(原発事故との因果関係は)考えにくい」
と語った。

福島県の甲状腺検査は約36万人を対象に実施中。

環境省は福島と他地域の子どもたちを比較するため、
青森県などで約4500人を対象に検査を進めており、
結果は3月下旬に公表予定。【蓬田正志、泉谷由梨子】

「影響判断できぬ」 北海道がんセンターの西尾正道院長の話

小児甲状腺がんの発生頻度は、
国立がん研究センターの推計などを基に
「100万人に1人」とされてきた。

今回の検査はこの通説より多く、
原発事故との関係があるか断定も否定もできない。

チェルノブイリ原発事故では
4~5年後に小児甲状腺がんの増加が認められたが、
その検査を実施しだのが4~5年後だっただけで、
もっと早くから発症していた可能性もある。

(記事終わり)

毎日の記事は、

「原発事故との因果関係は)考えにくい」

と話す福島医大の鈴木真一教授の意見と共に、

「断定も否定もできない」

と話す北海道がんセンターの西尾正道院長の
反対意見も紹介していました。

「放射線による健康影響は、今はまだよくわかっていない」
というのが科学的事実ですので、
安全派、危険派、両方の意見を取り上げるのが、
「市民にさまざまな社会問題の判断材料を分かりやすく伝える」
新聞の使命のはずです。

しかし、それがきちんと行われていたのは、
残念ながら毎日新聞だけでした
(福島民友もそれなりに頑張ったと思います)

また毎日新聞は、
甲状腺の記事の下に
「健康調査検討委山下座長が辞意」
という記事も合わせて紹介していました。

記事では、

「検討委をめぐっては秘密会の開催が発覚するなど不透明な運営が問題視されていた。」

と、「健康調査検討委員会」の問題点にもメスが入れられ、
「行政や政治の監視」という新聞の重要な役割を、
毎日新聞だけが果たしていました。

今回、こんな風に、
詳細に「新聞の紙面読み比べ」をしてみたいと思ったのは、

(巻町では)「市民の声(民意)」が新聞やテレビの報道マンたちの心を、大きく目覚めさせ、
局の報道姿勢を大きく動かしていった

ということを知ったからです。



今福島でも、
市民や、子ども福島のメンバーや、NGOの方たちが、
政治や行政に働きかけ、
少しずつ大きな山を動かしていっています。

それと同じように、
記者の人たちにも、市民一人一人が声を伝えてゆけば、
新聞社やテレビ局を、大きく動かせるのではないでしょうか?

例えば、毎日新聞や福島民友の今回の記事を
「頑張ってください!」と応援したり、

逆に福島民報や、読売新聞に、

「何故福島医大の意見だけを伝えるのか?」

「(原発由来であるかどうかは)断定も否定もできないという専門家の意見も紹介してほしい」

「甲状腺の検査が2年に一回では心配だという親たちの声も伝えてほしい」

という声を(批判ではなく提案として)伝えてゆけば、

現場の記者やディレクターたちは、(熱い思いをもっている人が多いので)きっと動き出してくれると思います。



アメリカのマサチューセッツ大学の言語学者で、
平和運動家のチョムスキー教授は、
ニューヨークタイムズなどアメリカの新聞の読み比べをすることで、
巨大な市民運動のうねりを作りだしました。

その活動スタイルは実に草の根的・市民的です。

チョムスキーの考えに共感した一市民たちが、
新聞の切り抜きをし、
自分の考えと共に「切り抜き」をチョムスキー教授に送ります。

例えば、甲状腺の問題がもしアメリカで起こったとしたら、
アメリカ各地から各新聞の「甲状腺がん2人発生」の記事の切り抜きが、
(それぞれの市民の意見と共に)チョムスキー教授のもとに送られてきます。

チョムスキー教授は、
それらの記事や市民の意見を、分かりやすく比較できるような情報にまとめ、
市民に向けて「再発信」し、
市民はその「情報」を武器に、
メディアや行政に声をあげてゆくのです。

福島でももしかしたら、
チョムスキー教授がおこなっているような活動を行なっている人が、
すでにいるのかもしれません。

福島で行われている

「情報を市民に開いてゆくための市民活動」

にはどのようなものがあるのか?

ご存じの方がいたらぜひ教えてください。


自分は今、「ほうれんそう新聞」や「厚労省ダイジェスト」という形で、
「情報を市民に開いてゆくための市民活動」をはじめまていますが、
是非皆さんとつながって、この動きを大きくしてみたいと思っています。



参考までに比較資料として、産経新聞と赤旗新聞の読み比べも載せておきます。

産経新聞(販売部数160万部)は、

「新たに2人が甲状腺がん」

との見出しで、
24面(社会面)で記事を紹介しています(2月14日)。

文字数はわずか138字。

全国版で紹介されてはいますが、
あまりに記事が小さすぎて、
思わず見落としてしまいそうな、取り扱い方でした。

記事の内容も
「原発事故による放射線の影響を否定した」と、
医大の見解だけが紹介されていました。



赤旗新聞(販売部数160万部)は、

「新たに2人が甲状腺がん」

との見出しで14面(社会面)で記事を紹介しています(2月14日)。

文字数は約160字。

全国版で紹介されてはいますが、
やはり記事が小さくて、
思わず見落としてしまいそうな取り扱いでした。

記事の内容は、
新たに2人見つかったという事実だけが報道され、
福島医大の見解も、
断定も否定もできないという専門家の見解も、
どちらも紹介されていませんでした。

赤旗新聞は、原発被害の補償や賠償問題に関しては、

「郡山市市議会が原発被害調査 東電は誠意示せ」(2月15日)

「東電の賠償打ち切り方針 被害者の苦痛今も」(2月18日)

など、他紙が扱わない、素晴らしい切り口で記事を書いてくれているので、

「甲状腺がん」の問題に関しても、深く掘り下げて、
(赤旗独自の視点で)記事を書いてほしかったです。

⑤につづく・・・

※参考文献
デモクラシーリフレクレクション~巻町住民投票の社会学~
リベルタ出版2005年 
by oomawotomeru | 2013-03-08 11:09 | 原発一般


大間原発を止めるための情報交換


by oomawotomeru

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「小出裕章さんのおはなし」

2012年4月「原発に反対しながら研究をつづける小出裕章さんのおはなし」をクレヨンハウスから出版しました。2011年3月変わってしまった世界を生きる子どもたちへ、この本を読んでよりよい未来を生きて欲しいとの願いをこめて書きました。
「原発に反対しながら研究をつづける小出裕章さんのおはなし」著者:野村保子 監修:小出裕章

http://www.amazon.co.jp/%E5%8E%9F%E7%99%BA%E3%81%AB%E5%8F%8D%E5%AF%BE%E3%81%97%E3%81%AA%E3%81%8C%E3%82%89%E7%A0%94%E7%A9%B6%E3%82%92%E3%81%A4%E3%81%A5%E3%81%91%E3%82%8B%E5%B0%8F%E5%87%BA%E8%A3%95%E7%AB%A0%E3%81%95%E3%82%93%E3%81%AE%E3%81%8A%E3%81%AF%E3%81%AA%E3%81%97-%E9%87%8E%E6%9D%91%E4%BF%9D%E5%AD%90/dp/486101218X

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